【素性悪いシリーズ Vol.2】組織を蝕むダブルスタンダード

「ルール」と聞くと、誰もが「守るべき正しいもの」という印象を持ちます。規律を重んじる組織において、その認識自体は正しいですし、必要不可欠です。しかし、組織のパフォーマンスを著しく低下させる「極めて素性の悪い状態」があります。

それが、ダブルスタンダード(二重基準)です。

それも、単なる思想や言行不一致の話ではありません。実務の現場で「相反する、あるいは微妙にズレた正解が同時に存在する」という、構造的な欠陥の話です。

◾️名簿の重複にみる、構造的な課題

「そんなこと、うちの会社ではありえない」と思うかもしれません。しかし、一歩現場に踏み込むと、驚くほど散見されます。

ダブルスタンダードの最も分かりやすい例が「名簿」です。ルールではありませんが、本来は組織に誰が在籍しているかを示す名簿は、会社に一つであるべき「正しい情報」です。しかし、実際には以下のような状態に陥っていないでしょうか。

  • 人事部が管理する「公式名簿」
  • 部門長が手元で管理する「配属名簿」
  • 現場担当者が使い勝手を優先して作った「連絡先名簿」

それぞれがコピペを繰り返し、自分の使いやすいようにカスタマイズされた「名簿」が並立する。これがダブルスタンダードの正体です。一度できてしまったコピーは、その後然るべき更新がされず、公式情報と乖離してしまうケースも珍しくありません。

◾️「言い訳の逃げ場」という最大の実害

この「名簿のズレ」を事務的な些細な問題だと見過ごしてはいけません。これは経営において、二つの深刻な害悪をもたらします。

第一に、「意思決定の鈍化」です。 管理者がどの情報を信じていいか確信が持てなくなると、不確実性を恐れ、生産計画や予算見積もりに過剰な「バッファ(ゆとり)」を持たせるようになります。数字が曖昧になることで、組織全体のスピードと精度が損なわれるのです。

第二に、これが最も深刻ですが、「社員に言い訳の余地を与えてしまうこと」です。 「どのデータが正しいか分からなかった」「古い方のデータを見ていた」……。ダブルスタンダードが存在する組織では、ミスや不作為を正当化する「逃げ場」が生まれます。正解が二つある状態は、責任の所在を曖昧にし、組織の規律を根本から崩壊させます。

◾️「素性の良い管理」は、管理しないこと

では、どうすればこのダブルスタンダードを排除できるのでしょうか。 一次情報の扱いにおいて、最も素性が良い状態とは、「限りなく自動化され、人が介在しない状態」を指します。

本来、管理の秘訣は「管理しなければならないこと」を減らすことにあります。「素性が良いシステム」であれば、そもそも利用者の教育すら必要ありません。誰がどう操作しても、データが自動連携され、正解が一つに定まるよう設計されているからです。人が介在すれば必ず間違うリスクが生じます。入力の機会を最小限にし、人がデータを加工する手間をなくすことこそが、究極の対策です。

◾️「神は細部に宿る」:名簿に現れる組織の格

「名簿の管理なんて、レベルの低いどうでもいい話だ」と感じる方もいるかもしれません。しかし、「神は細部に宿る」という言葉通り、こうした些細な部分にこそ、その会社の真のレベルが現れます。

お寿司屋さんの実力が「卵焼き」の味一つで測られるように、あるいは一流の職人が見えない裏側の仕上げにこだわるように、組織の強さは「名簿一つが力まずに正しく運用されているか」という微細な規律の積み重ねで決まります。

ポータルサイトのここを見れば必ず正しいデータがある。社員全員がそれを知っており、そこへ見に行く作法が徹底されている。こうした「当たり前」を当たり前にこなすこと。

仕組みを整え、教育を施した上で、なお怠慢からダブルスタンダードを生み出す行為を許さない。この一貫した在り方で、組織から「言い訳」を排除し、スマートで素性の良い状態維持する。

それが「あるべき姿」です。

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