組織を運営していると、「もっと管理を強化しなければ」と感じる場面は少なくないはずです。
品質、納期、人材、コスト…。気づけばチェック項目やルールが膨れ上がり、現場も管理者も管理そのものに追われてしまう。そんな経験は、多くの方にあると思います。
私自身、かつて工場の管理を任されていたときに同じ状況に陥りました。
そして最終的にたどり着いたのが、「管理の基本は管理しない」という考え方です。
もちろん管理を放棄するわけではありません。
本当に大切なのは、「管理すべき対象をどこまで減らせるか」そして「自然と望む結果が出る仕組みをどう整えるか」です。
その先にある究極の形が「管理しない状態」であり、そこに少しでも近づけるよう意思を持って行動することこそ、管理者に求められる姿勢だと考えています。
◾️設計の現場からの学び
私はもともと機械設計の仕事をしていました。
設計とは、材料に形を与え、寸法を決め、さらに「公差(許容される誤差)」を設定することです。
未熟な設計は、あちこちに厳しい公差をつけなければならず、その結果、管理項目が膨れ上がります。
製造現場は公差を守るために膨大な手間とコストをかけざるを得ません。
一方で良い設計は、そもそも管理すべき寸法が少なく、その公差も現実的に守れる範囲に収まっています。
違いを生むのは「部品のばらつきを吸収できる仕組みが組み込まれているかどうか」です。
さらに、その思想を形状として具現化できなければ意味がありません。
センスも問われますが、コロンブスの卵のように、一度答えを見れば驚くほど単純な仕組みも多い。
だからこそ、知恵として正しく共有すれば誰もが再現できる技術でもあるのです。
◾️管理にも同じ原則が働く
では、工場管理や組織運営はどうでしょうか。
実はここにも、設計と同じ原理原則が働いています。
誰がやっても同じ水準に落ち着くように仕組みを整える
あまり意味のないが足かせになっている規格やルールは基準を下げるか思い切ってなくし、その分、本当に大事な基準をしっかり守る
こうした工夫を積み重ねることで、「管理しなくてもよい状態」に少しずつ近づいていきます。
◾️皆さんの現場はどうでしょうか?
今、現場で行われている管理にはすべて理由があるはずです。
しかしその中に、「不要な管理」は紛れ込んでいないでしょうか。
チェック項目を増やすのは簡単です。
やめるには理由の確認や勇気が必要になるからこそ、減らすことは後回しにされがちです。
けれども、そのツケは「未来の管理のための時間」を確実に奪っていきます。
皆さんの現場では、管理が増えることで成果が出やすくなっていますか?
それとも、逆に現場を疲弊させ、管理者自身も「管理のための管理」に縛られていませんか?
管理者の本当の役割は、細かい指示を出すことではありません。
「誰がやっても自然と良い成果が出る仕組み」を整えることです。
管理の究極は、管理を意識せずとも成果が出る状態をつくること。
それが「あるべき姿」です。
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